相続を承認・放棄するタイミングとその注意点
春日部市の相続専門美馬克康司法書士・行政書士事務所
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メールはこちら熟慮期間中に相続人が亡くなった場合や、相続が二重・三重に重なるケースを中心に解説します。こうした場面は実務でも実際に起こりうる重要な問題です。
熟慮期間中に相続人が亡くなった場合
相続人が承認や放棄の意思表示をしないまま熟慮期間中に亡くなってしまうことがあります。
たとえば、父Aが亡くなり、子Bが相続人になったとします。ところがBがまだ承認も放棄もしていないうちに、B自身も亡くなってしまった。この場合、Bの子であるCが代襲相続人として登場します。
このとき熟慮期間の扱いがどうなるのかが問題です。民法では、熟慮期間は相続人本人ごとに計算するとしています。つまり、BがAの相続について承認・放棄をしないまま死亡した場合、Cの熟慮期間は「CがAの相続人となったことを知ったとき」から新たにスタートするのです。
これにより、Cは自分の立場で改めて「承認」「限定承認」「放棄」を選ぶことができます。
民法916条
相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
再転相続とは
相続が連続して起こることを再転相続といいます。たとえば次のような場合です。
- 被相続人Aが死亡 → 相続人Bが相続人となる
- しかしBが承認・放棄をしないまま死亡 → Bの相続人Cが登場
ここでCは、第1の相続(AからBへ)と第2の相続(BからCへ)の両方について判断をしなければなりません。
つまり、Cにとっては
- Aの相続をどうするか(承認か放棄か)
- Bの相続をどうするか(承認か放棄か)
という二重の判断が必要になるわけです。
承認・放棄の組み合わせ
Cの立場で考えると、次のような選択肢の組み合わせが生まれます。
- Aを承認、Bも承認
Aの遺産もBの遺産もすべて相続。Cは両方の負担を背負う。 - Aを放棄、Bを承認
Aの遺産は一切引き継がないが、Bの遺産は相続。Bの遺産にAから受けた相続分が含まれる場合、複雑な整理が必要。 - Aを承認、Bを放棄
Aから直接Cに財産が移る形(代襲相続的な結果)になる。ただしこの場合、CはBを経由せずにAの遺産を承継するので、注意が必要。 - Aを放棄、Bも放棄
Aの遺産もBの遺産も引き継がない。Cは一切の負担や権利を持たない。
これらのパターンは、実務で相続人から相談を受けるときによく登場するテーマです。「どちらを放棄して、どちらを承認するのが有利か」という判断は、遺産と債務の内容によって大きく変わります。
再転相続のリスク
再転相続が起こると、相続人は短期間で立て続けに複数の判断を迫られます。例えば、Aの相続の熟慮期間中にBが亡くなり、Cが両方を引き受ける立場になると、Cは第1と第2の相続について同時に承認・放棄の判断をしなければならないこともあります。
特に問題となるのは、CがBの相続を放棄した場合です。このとき、CはBの立場を通じてAの相続を放棄したことにもなりかねません。最高裁判例も示すように、「Bを放棄するとAに対するBの地位も消える」ため、CはAの相続にも入れなくなります。
つまり、組み合わせを間違えると「本来もらえるはずだったAの遺産まで失ってしまう」可能性があるのです。
実際によくある相談例
- 高齢の親が相続人になったが、熟慮期間中に亡くなってしまった
→ 子が再転相続人となり、親の判断を引き継ぐ。 - 相続人が短期間に続けて亡くなり、誰がどの相続を放棄できるのか分からなくなった
→ 代襲相続と再転相続が絡み、判断を誤ると不利益が大きい。 - 借金が多い家系で、承認と放棄をどう組み合わせるべきか分からない
→ ケースによっては、相続放棄を組み合わせて債務を回避する必要がある。
相続の承認・放棄には「期限」と同時に「タイミング」が重要です。
相続が重なったときは、もはや一般の方だけで判断するのは難しく、専門家への相談が不可欠です。司法書士などの専門家に相談すれば、承認・放棄の正しい組み合わせや期限管理をサポートできます。
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