相続を放棄した人と特別受益者はどう違うか
春日部市の相続専門美馬克康司法書士・行政書士事務所
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メールはこちら相続の場面では、「生前に多くの財産をもらっていた人(特別受益者)」と「相続を放棄した人(相続放棄者)」が共に登場することがあります。両者は一見似たような扱いを受けると思われがちですが、相続分の計算方法や扱い方は大きく異なります。
この違いを理解することは、公平な遺産分割を行う上で非常に重要です。
特別受益者と相続放棄者
特別受益者とは
特別受益者とは、被相続人から生前に贈与(援助)を受けていた相続人のことです。贈与内容が「結婚、教育、住宅取得、事業資金」などの場合、それが相続財産に含まれると見なされて、「すでに相続の一部を受け取っていた」とされます。
特別受益者は原則として相続人であり、相続分の計算において、他の相続人との公平を保つため、受け取った財産分を差し引いたうえで最終的な相続分(結局の相続分)が決まります。
相続放棄者とは
一方で、相続放棄者とは、家庭裁判所で正式に相続を放棄した人のことです(民法939条)。この人は、はじめから相続人でなかったものとみなされるため、相続財産の分配にも負債の承継にも一切関与しません。
つまり、特別受益者は「相続人のまま調整される人」、相続放棄者は「はじめからいなかった人」として扱われるという点が大きな違いです。
民法939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
計算上の相違:法定相続分への影響
特別受益者は、相続人のままであり、みなし相続財産(遺産+生前贈与額)に対する相続分を計算します。
一方、相続放棄者は相続分の計算対象から完全に除外されます。
たとえば、被相続人に妻と子A・B・Cがいるとします。法定相続分は次のとおりです。
- 子C:1/6
- 妻:1/2(3/6)
- 子A:1/6
- 子B:1/6
ここで子Bが相続を放棄すると、Bは相続人でなくなるため、残りの相続人である妻A・C・Dのみで相続分を再計算します。
再配分の結果:
- 妻:3/6(据え置き)
- 子B・C:それぞれ1/6(→子Aの1/6をBとCで1/12ずつ再分配)
このように、相続放棄者が出ると他の相続人の取り分が増加するのが特徴です。
計算上の相違:持ち戻し(消極財産)への影響
特別受益者は、債務の承継にも関与します。生前贈与を受けていたとはいえ、相続人であることに変わりはないため、消極財産(負債)についても他の相続人と同様に負担します。
一方、相続放棄者はそもそも相続人ではないので、債務を一切引き継ぎません。
実際の例にみる違い
特別受益者がいる場合
子Aが被相続人から贈与を受けていた(たとえば500万円)。
相続財産が1,500万円ある場合、500万円を加えてみなし相続財産=2,000万円として扱い、子Aの取り分を再計算します。
→ 本来の相続分から贈与分を差し引いた金額が「結局の相続分」となります。
相続放棄者がいる場合
子Aが相続放棄。法定相続分から完全に除外され、他の相続人の取り分が増加します。
たとえば、子Aが放棄した場合、その分を子Bと子Cで按分して、1人あたりの相続分が増えます。
相続登記への影響
相続放棄者は、登記申請に一切関与しないことが原則です。
一方、特別受益者は、相続分の算定に関与し、場合によっては「相続分がない旨の証明書(民法903条2項証明書)」を添付することで、他の相続人が単独で相続登記を行うための手続きに協力する必要があります。
このように、「相続放棄者」と「特別受益者」は一見似ていても、法律上の位置づけ・計算式・登記の取り扱いにおいて、明確に異なるのです。
はじめての相続《民法解説》は、掲載日時点における法令等に基づき解説しております。できるだけ最新の情報で掲載しておりますが、掲載後に法令の改正等があった場合はご容赦ください。
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