048-970-8046

営業時間8:30~18:30

土日祝営業の年中無休

東武スカイツリーライン せんげん台駅 西口1分

特別受益者がいる場合の相続分はどう決まるか

春日部市の相続専門美馬克康司法書士・行政書士事務所

埼玉県越谷市千間台西1丁目12番地1ダイアパレスルネッサせんげん台506号

東武スカイツリーラインせんげん台駅 西口1分

営業時間8:30〜18:30
相続越谷春日部の美馬事務所の周辺地図

048-970-8046

メールはこちら
はじめての相続《民法解説》特別受益者がいる場合の相続分はどう決まるか

生前に多くの財産を受け取った「特別受益者」が相続人に含まれている場合、その相続分をどう調整すれば公平なのか、という問題は相続実務において極めて重要です。民法第903条は「特別受益を受けた者があるときは、共同相続人の公平を図るために、それを相続分の計算に反映させるべき」と定めています。
この調整を行うには、次の3段階のステップを踏みます。

民法第903条
1. 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2. 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3. 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4. 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

ステップ1:みなし相続財産の計算

相続開始時点での財産に、生前に贈与された特別受益分を加算して「みなし相続財産」を算出します。

例:

  • 相続開始時の財産:3,000万円
  • 特別受益(生前贈与):900万円
  • みなし相続財産:3,900万円

遺贈による財産は、相続開始と同時に発生するため原則として加算しませんが、結局の相続分を計算する際には控除対象として扱います。

ステップ2:本来の相続分の計算

みなし相続財産に基づき、法定相続分(または指定相続分)に応じて各人の「本来の相続分」を算出します。

例:相続人が配偶者と子3人であれば、配偶者1/2、子は1/6ずつ。

3,900万円 ×1/2 = 1,950万円(配偶者)
3,900万円 × 1/6 = 650万円(各子)

ステップ3:特別受益分を控除して「結局の相続分」を計算

特別受益者が受けた生前贈与などの金額を、本来の相続分から控除して最終的な取り分を算出します。

  • 特別受益者(子A):650万円 − 900万円 = 0円(※超過部分の返還義務なし)
  • 子B:650万円
  • 子C(遺贈600万円):本来の相続分から600万円を控除(特別受益とみなすかどうかで変動)

調整の負担は誰が負うのか

特別受益者が本来の相続分より多く受け取っていた場合、その超過分の負担を誰がどのように分担するのかは、判例・学説上でも意見が分かれます。次の4つの考え方が代表的です。

配偶者優遇説

配偶者は婚姻関係にあるのみで血縁関係がないため、特別受益の負担から除外すべきとする考えです。
→ 特別受益の負担は血族相続人(子など)がすべて引き受けます。

超過特別受益者不存在擬制説

本来の相続分を超えて生前贈与を受けていた者(超過特別受益者)は、初めから相続人ではなかったとみなして、残りの相続人だけで財産を分け直すという方法です。
たとえば、3人の子のうち1人が超過特別受益者なら、その人を除外して残りの2人だけで配分します。

具体的相続分基準説(実務上最有力)

特別受益者以外の者については、残された現実の財産を法定相続分に応じて分配するという考えです。
たとえば、みなし相続財産で本来の相続分を計算し、その後、特別受益額を控除して得られた最終相続分(結局の相続分)を、実際の財産から割り当てていきます。
→ 実務や家庭裁判所ではこの方法が最も採用されやすいとされています。

本来の相続分基準説

特別受益の負担を、各相続人の本来の相続分に応じて按分して引き受けるという説です。
たとえば、妻と子3人の場合、法定相続分が妻1/2、子1/6ずつであれば、その比率に応じて特別受益の超過分を割り当てます。
理論的には整合性がありますが、実務では計算が複雑になりやすく、採用されにくい面があります。

上記理論による最終相続額の比較

考え方子A
(900万贈与)
B子 C
600万円遺贈
配偶者優遇1,950万円0約418万円約32万円
不存在擬制1,200万円0600万円600万円
具体的相続分基準約1,766万円0約588万円約45万円
本来の相続分基準1,800万円0600万円0円

このように、同じ事案でもどの理論を採用するかによって、相続額は大きく異なります。

判例・実務の位置づけ

昭和34年3月30日の法務省民事局の法曹会決議では、子1人が特別受益によって相続分を受け取れないときは、その人を除いた残りの人で相続分を再配分すべきである(=不存在擬制説)とされています。
しかし、令和以降の実務では、具体的相続分基準説が最も採用されているとされ、家庭裁判所の運用もそれに沿うことが多くなっています。

本記事作成美馬克康司法書士・行政書士

はじめての相続《民法解説》は、掲載日時点における法令等に基づき解説しております。できるだけ最新の情報で掲載しておりますが、掲載後に法令の改正等があった場合はご容赦ください。

  • 当事務所の感染症対策の ご案内
  • 当事務所が掲載された メディアのご案内
  • 明朗会計をお約束 定額料金のご案内
  • 春日部・せんげん台の相続専門美馬克康司法書士・行政書士事務所
  • 埼玉県越谷市千間台西1丁目12番地1
    ダイアパレスルネッサせんげん台506号
    せんげん台駅西口1分
  • 初回 相続相談 30分無料
  • 048-970-8046
  • 8:30〜18:30土日祝営業
  • メールのお問い合わせ