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はじめての相続《民法解説》遺産分割協議の成立後の変更と解除

遺産分割協議は、相続人全員が話し合い、誰がどの財産を取得するかを決める重要な手続です。

遺産分割協議が成立したのちに、「代償金を支払ってもらえない」「後から協議内容を変更したくなった」「新しい財産が見つかった」など、新たな問題が生じることもあります。

遺産分割協議が成立すると法的な効力が生じる

遺産分割協議は、相続人全員が合意することで成立します。成立した協議は契約と同様に法的な効力を持ち、相続人は原則としてその内容に従わなければなりません。

たとえば、長男が自宅を取得する、長女が預貯金を取得する、次男が代償金を受け取る、という内容で協議が成立すれば、その内容に基づいて相続登記や預貯金の解約などが進められます。
そのため、「やっぱり気が変わった」という理由だけで、一方的に協議内容を変更することはできません。

代償金が支払われない場合は解除できるのか

実務で比較的多い相談の一つが、代償分割を行ったものの、約束した代償金が支払われないというケースです。

たとえば、長男が4,000万円の自宅を取得し、その代わりに弟へ2,000万円を支払うという内容で協議したにもかかわらず、長男が代償金を支払わない場合です。

このような場合、「契約違反なのだから遺産分割協議も解除できるのではないか」と考える方も少なくありません。

しかし、この点について最高裁判所は、遺産分割協議は通常の契約とは異なる性質を持つため、代償金が支払われないことを理由として、民法の債務不履行による解除の規定を適用することはできないと判断しています(最高裁判所判決平成元年2月9日)。

つまり、代償金が支払われないからといって、当然に遺産分割協議全体を解除できるわけではありません。このような場合には、代償金の支払いを請求するなど、別の方法で解決を図ることになります。

相続人全員が合意すればやり直すことはできる

一方で、相続人全員が改めて話し合い、「以前の遺産分割協議を変更しよう」ということで全員が合意した場合には、遺産分割協議をやり直すことができます。

この点についても、最高裁判所は、共同相続人全員が合意すれば、成立した遺産分割協議を変更することは可能であると判断しています(最高裁判所判決平成2年9月27日)。

たとえば、最初は「長男が自宅、長女が預貯金」という内容で協議したものの、後になってから自宅を売却し、売却代金を分けるという内容で相続人全員が合意したのであれば、新たな遺産分割協議を成立させることができます。

一人でも反対すればやり直しはできない

もっとも、やり直しには相続人全員の合意が必要です。一人でも反対している相続人がいる場合には、新しい遺産分割協議は成立しません。

これは、最初の遺産分割協議が相続人全員の合意によって成立したものである以上、その内容を変更する場合にも全員の合意が必要になるためです。そのため、一部の相続人だけで勝手に内容を変更することは認められません。

やり直しをすると新たな協議書が必要になる

遺産分割協議をやり直す場合には、新たな遺産分割協議書を作成することになります。
以前の協議書に書き加えるだけではなく、新たな協議内容、相続人全員の署名、実印による押印など、通常の遺産分割協議書と同様の手続を行うことが望ましいでしょう。
その後、不動産がある場合には、新しい協議内容に基づいて登記手続を進めることになります。

新しい財産が見つかった場合

遺産分割が終わったのちに、新たな財産が見つかることもあります。

たとえば、他の金融機関の預貯金、株式、遠方の土地などが、あとから判明するケースです。このような財産は、以前の遺産分割協議の対象になっていません。そのため、新たに見つかった財産については、改めて相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。

もちろん、最初の遺産分割協議書で、後日判明した財産については長男が取得するなどと定めている場合には、その内容にしたがうことになります。

円滑な相続のためには最初の協議が重要

遺産分割協議は、相続人全員が納得したうえで慎重に進められるはずです。

一度成立すると不動産の名義変更や預貯金の払戻しなど、さまざまな手続が進められます。その後に協議を変更すると、以下のような新たな問題が生じることがあります。

  • 登記をやり直す必要がある
  • 金融機関で再度手続が必要になる
  • 第三者との法律関係に影響が及ぶ

そのため、簡単にやり直せると考えるのではなく、本当に変更が必要かどうかを十分に検討しなければなりません。

本記事作成美馬克康司法書士・行政書士

はじめての相続《民法解説》は、掲載日時点における法令等に基づき解説しております。できるだけ最新の情報で掲載しておりますが、掲載後に法令の改正等があった場合はご容赦ください。

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